2016年3月24日:高次脳機能障害(精神障害)を抱えながら就労している方へのデプスインタビュー(約2時間)を実施したので、その要点を整理した。

2016年3月24日:高次脳機能障害(精神障害)を抱えながら就労している方へのデプスインタビュー(約2時間)を実施したので、その要点を整理した。

*個人情報保護のもと、録音、本レポートの作成とウェブでの公開について許可を頂いた。(作成者:就労支援G田口)

 

  • 障害者の就労は、雇用主、社会、当事者が障害を前向きに受け止めていかなければならないと考える。
  • 障害者雇用というと、「弱者を助ける」という視点が強い。ゴールは「社会共生」。
  • 私の場合、脳障害(主に記憶、注意、遂行機能等の前頭葉脳障害+過去の記憶喪失)がある。自分自身が障害を受けたという記憶も自覚もなかったため、医療従事者から何度も説明を受けたが、障害を受容するまでに数年がかかった。それでも半ば強引に社会復帰をし、就業・社会生活を通じて、自分が障害を持っていることを自覚するようになった。受容までの道のりが長く困難であった。
  • 退院してからリハビリ(ちなみに正式なリハは3種ある。OT:作業療法、PT:運動療法、ST:言語療法)を経て、半年で社会復帰をした。一方で、半年で脳障害者が一般社会で働けるようになるところまで回復することは大変難しく、5年後の就業復帰・継続率は20%弱。とはいえ、自身の背景(未就学児が3人、住宅ローン、一家の大黒柱、)も重なり、働きながら機能回復も目指すという、とても高負荷な状況で、障害受容~社会復帰を目指すこととなった。そのため少しでも就労ギャップインパクトを減らすために、現在もSTリハビリ介入を続けている。現在に至るまで7年経っているが、精神的負担も大きかった。就労定着という点では、いまだに定着しているとは言えないが、比較的うまくいっている。私に限らずほとんどの患者で就労定着がなされていないのが事実。
  • 就労の希望を医師に伝えた際、「まだ早い」といわれたが、最終的には自分の意思を優先した。先生に言わせると、あなたの脳機能の状態は8人でサッカーを戦っているような状況。3人退場になって8人で、11人のチームに対して同点に持ち込まないといけないような状況にいるとのことだった。自分の場合、受傷前の記憶を失ってしまったので、社会復帰が結構大変だった。社会復帰に成功すると、周囲から「通常のこと」ができると思われてしまうが、今までできていた業務が全然できない(ミスの連発)ことを日々発見する毎日でパニック状態になった。自分のような障害を持つ人が、自分のことをきちんと把握できるようになるまでに一般的に5-10年程度はかかる、もしくは把握できない方々が大半とのことだった。
  • 2008年8月から3社で普通雇用された経験を経た後、復職後7年後に障害者手帳を取得し、現職の「障害者雇用」に至る。それによりストレスが大分なくなって現在、一応元気に働けている。障害者手帳に対する周りの偏見は意外になかった(むしろ地域・社会の偏見のほうが大きかった)。職場では、自分に障害者があることが周りに理解されているので、大分働きやすくなった。障害があることをオープンにするかしないかは人による。(たとえば症状が軽い境界域の患者や、未婚、女性、若い方、逆に働く必要のない65歳以上の方は、手帳を取得しない傾向にあったり、そもそも積極的な機能回復を目指すリハビリ自体行わない傾向あり)
  • 見えない障害に対するツールについて、少し前に妊婦マークやピンクリボンのようなものを使う・使わない、の議論が出ていた。自分の場合は自分で対応できるので不要と考えるが、自分で言えない人もいると思うので、なんらかの社会啓発は必要と考える。例えば、電車のシルバーシートみたいなのが将来的になくなっていく事(「共生」、障害者等が社会から排除されないノーマライゼーション)が我々が目指したいところ。
  • 復職して苦戦したのは、期待値と実質値のギャップ。障害者本人と周り(上司、人事)のギャップを少なくするために、何ができるのか、何ができないのか、どんな就労環境だと負荷が高いのかを細かくリストアップして、人事に事前に提供した。「すべて対応できるわけではありませんが」と言われたが、ある程度配慮してもらった。同じ種類(名称)の障害でも、症状や重症度は千差万別なので、それを理解することが重要。仕事のパフォーマンスも人によって違うので、画一的でない雇用・賃金制度が必要(年収が非常に低い場合が多いので、もう少し改善すべき。)
  • 障害者が就労した場合の人事評価制度:同じ精神障害といえども、脳障害とCNS障害とではその特性は大きく異なる。脳障害者は脳機能が物理的に欠損している(気分的な不安定性ではない)ため、その人がやれること、その人の強みとうまくマッチングすれば、逆に非常に高いパフォーマンスが発揮される可能性があるので、「自己目標管理型」がよいと思う。現職でも自分ができること+αの目標を設定して、毎年、人事とすり合わせている。
  • これからの企業と障害者(当事者)に求められるのは、「バリアをバリューにする力」。産業医(眼科)の三宅先生によると、目が見えない人は空気を読むのがうまく、カウンセリングに向いているという。カウンセリングを受ける側も自分の顔を相手に見られることがないので視力障害がプラスになっている。自分の場合も、だれが見ても分かりやすい資料を作成できるので、新入社員にとっても良いし、仕事のやりがいを感じられる。
  • この間、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)主催のセミナーで講演してきた。大手企業の人事担当者が集まっていたが、製薬会社の人が参加していなかったのが残念。来年から精神障害者の法定雇用率が上がるため、企業側がどういう人を実際に雇用したらいいかわからず混乱があるため、今回このようなセミナーが開催された。
  • 街づくりにしても、障害者が動きやすい街は老若男女だれにとっても動きやすい街づくりであることを意識することが重要。「障害があるから障壁を取ってあげよう」という発想はちょっと違和感がある。発想が変わることによる変化は大きい。海外ではinclusive designという発想で、障害者が使いやすいペンなどが開発されている。参考IDSホームページ:http://i-d-sol.com/inclusivedesign/
  • 色々な患者会なども参加してみたが、社会保障を多くしてほしいという声や、自分たちが居やすい世界をつくろうとする集団もあった。当事者間で自ら壁を作っている気がした。どちらが良い・悪いということではないが、私のように一般社会と共生していきたいと考えた場合は、当事者ももっと働きかけていかなければいかないと考える。課題は満載だが、だれかがやっていかないといけない。
  • 障害者雇用のしばり:現在、週30数時間働かないと補助金が出ない仕組みになっているが、障害者によって状態が違うので、社会復帰の足かせになっている。週3日勤務でもOKとか、会社としても柔軟に対応することが必要。かなり長期的な視点になるが、教育現場での取り組みも重要と考える。
  • 障害は一個人の特性ではなく、当事者と社会の環境ギャップと捉えるよう、受傷7年が経過して感じるようになった。1人では解決できない。障害者が場を用意してくれというのはおこがましいと思うが、生きやすい社会になってくれると嬉しいと考える。

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