患者中心の医療はポリファーマシーからではなくQUMから

高齢者の多剤投与(ポリファーマシー)が話題になっています。

一度に20剤飲まなければとか10剤は重罪だとか、多くの議論がなされています。

ポリファーマシーの代表的なケースは多科受診で処方を合わせると多剤になる場合と1科で多剤処方の場合があります。

多科受診になるのは高齢者が生活習慣病のみならず、老化に伴う疾患も多く出てくるからです。そのため内科以外に整形外科や眼科などの他科の受診も増えてきます。

一般にクリニックは横に調剤薬局がありますので、患者さんは受診後隣の薬局でお薬をもらうケースが多いのです。

各薬局で別々にお薬をもらうので重複投与があっても薬局ではわかりませんし、薬剤師は頂いた処方箋以外のお話はできません。お薬手帳も多く持っています。

この場合は薬局を一つにすると胃腸薬などをはじめ重複投与は解決できるでしょう。

1科で多剤投与の場合、多くの合併症を勘案して処方されているならば、一概にポリファーマシーだから減らしてくださいとは言えません。

ポリファーマシーは「こうすれば解決する」というという解はありません。

また、ポリファーマシーと残薬の問題が多く取り上げられていますが、これはどちらかというと医療費削減の視点が強いようです。

高齢者がこんなに多くのお薬を飲まされているのです。「家にお伺いすると残薬がこんなにありました」などの報道や記事を良く見られます。

私はこうしてポリファーマシーを減らしました。という薬剤師の記事も多数あります。

 

本当にこれでいいのでしょうか。

 

私たちが取り組むのはポリファーマシーや残薬からではなく、医薬品の適正使用からではないでしょうか。

医薬品の適正使用QUM(Quality Use of Medicine)を求めた結果がポリファーマシーや残薬解消につながるのです。

患者中心の医療から考えた場合、ポリファーマシーや残薬から入るのではなくQUMから入りましょう。

「医薬品の適正使用」の余碌がポリファーマシーや残薬の解消なのです。

患者さんにとって一番大切なもの。それはQUM「医薬品の適正使用」です。

高齢者はひとりひとり状態が違いますので、個人に合ったQUMが求められています。

 

JPPaC副理事長 平野裕幸

「医療経済」掲載中:<続報>希少疾患の高い薬剤の治療コストは?

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希少疾患の治療費は高額だ。一番の相違は各国の保険制度の違いによって、いくら良い治療法があっても患者側・支払い側(プライベート保険含む)にも双方に支払へのフラストレーションがある。治療薬があってもアクセスできない。貧富の激しい国では治療が出来ない。

この解決方法は日本とだいぶ違っている。まず、製品の価格にディスカウントやTIERがある。(同じ製品でもいくつかの違う価格帯で販売する)それを上回るのがその疾患に関する基金の存在だ。

特に新興国でのメディカルアクセスの問題が非常に多く上がっていた。80%の希少疾患は遺伝性の疾患であり、多くは幼少期から発症する小児疾患であることが分かっている。ただ、そういった遺伝性疾患を診る医師が国のどこの施設にいるのか、また潜在患者や未治療の患者はどこにいるのか? (多分これは日本でも共通の課題だと認識している)そのために早期診断が遅れ重症化し、患者や家族が情緒的、倫理的な破滅に追い込まれ自殺する例も少なくないそうだ。そのための精神科医師またはそれに代わる専門家のサポートが必ず必要になるということも強調されていた。早い段階からのスクリーニング検査、精度の高い疫学調査、これは医師や病院指導でアカデミアのサポートを受けながら実施しないと難しいだろう。スエーデンのカロリンスカ大学病院の希少疾患センターがストックホルム市政の援助を受けて活動している様子も紹介された。加えて医師の情報公開やグローバルでの疾患レジストリーの重要性、一般人への教育も繰り返し強調されていた。GISTに関するグローバルレジストリーをサポートしているアメリカのNPOも参加し、その中には日本人のGIST患者グループの登録も紹介されていた。

オーファンドラッグの開発が少なくともここまで進んできた背景には、研究機関や患者やその家族とのパートナーシップも貢献しているという。例えば、バイオバンクへの患者の検体提供などの推進により、今まで診断されていなかった疾病も一定の割合で治療見通しがつくことも分かってきた。テレメディスンを利用した遠隔相談や治療へのアドバイスも積極的に利用できるリソースであり、また治験に関しても少数の患者では1各国では難しいのでグローバルでの患者の参加も提唱されており、今後はどの疾病で世界のどの施設が中心になって実施しているのかが分かれば、日本人でも十分に対応可能であろう。

そのためには、特に遺伝疾患に関する医師の存在をもっと公開していくべきかもしれない。

製薬メーカも今までは利益追求の点からあまり積極的には手を付けたくなかった領域ではあるが、色々な優遇条件などが追加されビジネスとしての見通しも立ってきた。

今回NIH(米国)機能で印象的だったのは、「診断されていない疾患プログラム」を持つ部署があり、この7年間で世界中から7500件の問い合わせがあり、2800件に関して詳細な医療情報が寄せられ、そのうち780人がNIHのクリニカルセンターで検査を受け25%の患者の診断がついたという。日本では京大の先生方とコラボしているそうだ。ICORDは来年は、南アフリカで実施される。このようにカンファレンスの実施地を世界中に回すことで少しでも希少疾患の認知を広げたいと願っている。

「医療経済」掲載中:希少疾患・オーファンドラッグの動向を求めてメキシコへ

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秋の気配が心地よく感じられる日本からちょっと離れ地球の裏側にあるメキシコに

行った。今回の目的は、ICORDという希少疾患とオーファンドラッグの国際カンファレンスに参加するためである。ちなみにメキシコシティは海抜2000mの高地にあるが、酸素は十分、むしろ交通渋滞のスモッグが著しい場所である。

2年ほど希少疾患の製品やマーケティングその周辺の動きを追いかけてきた。「グローバルでは希少疾患はどのように扱われているのか?」といった単純な疑問もあったが、今回メキシコ国内・ラテンアメリカ・グローバルと3つの学会が合わせて行われたことも興味深かった。2年前は日本で実施されたICORDであるがその時には「ゆきわり草憲章」というものが発表されている。アジアからの参加者は少なく、日本からは私を含めて2名、中国からは政府関連の方、メーカに勤務する人、大学で公衆衛生を先行している大学院生など日本より多かったのだが、総勢10人も満たなかった。特にアセアンからの参加者は皆無であった。せっかくインドでは希少疾患についてグローバルな動きが始まったのだが。

今回の会議のハイライトを簡単に紹介したい。日本では希少疾患に加えて難病という言葉も使用されているが、グローバルではレア・ディジーズという言葉で一般的に汎用されている。ただし、その定義について対人口での罹患率として、決まっているのがアメリカ・ヨーロッパ・日本の先進国3か国ぐらいで他の国、ラテン系の国々ではしっかりとした定義は決まっていないようであり、特にメキシコはこの領域は米国より22年以上遅れているということだった。しかしながら参加している人たちの中には家族もいたり、患者会の代表の人もオーガナイザーとして入っていたりさすがラテンの国で、未来は明るく、グローバルでのネットワークをどんどん築いていこうといった活気が感じられた。

特に、心を打たれたのはコロンビアの女性医師の発表で、遺伝性血管浮腫についての疾患治療の説明の後、自らの家系がこの遺伝性疾患であり実は自分も患者であることを発表し、

コロンビアという希少疾患の対応に関してはまだまだ遅れている国で、日夜頑張っている姿だった。このような状況を見るとやはりこの領域はグローバルのネットワークが必須だと強く感じる。創薬にしても1か国という狭い枠の中ではなく、世界を視野に入れて患者を救うといった認識が求められる。

余談だが、つい最近PMDAが「さきがけ審査」6品目を発表した。胃癌治療薬(MSD)、

インフルエンザ治療薬(塩野義)、急性骨髄白血病治療薬(アステラス)、血管線維種(ノーベルファーマ)、デュシエンヌ型筋ジストロフィー(日本新薬)、遺伝性血管浮腫の薬剤である。特に後者3つは治療現場では、患者のQOLも含めて待ち望まれている希少疾患の薬剤だ。「地球上のあらゆるところに該当する患者がいる」ということが治療薬として本当の意味での大きな価値になると強く感じている。